コオイムシ 子負虫 Appasus japonicus は、カメムシ目コオイムシ科に属する水生昆虫です。
メスがオスの背部に卵を産み、オスは背中に産み付けられた卵を持ったまま移動する姿から、子守りする人間に見立てて「子負虫」と呼ばれます。
オスが子育てをする事から「あべこべ虫」とも言われています。
成虫の体長は17-20mm、体色はやや薄い褐色です。
メスの方が僅かに大きいが、雌雄の体格にあまり差はありません。
卵を背負ったオス以外は、尾端の亜生殖板の先端形状から性別を判別する事ができます。
鎌状の前肢を持ち先端には二本の爪があり、カマキリのように縦から押さえつけるように獲物を捕らえます。
尾端に水上呼吸用の短い呼吸管があり空気の補給をします。
呼吸管は体内外への出し入れができます。
腹部と翅の間に保持した気泡により長時間水中で行動することが出来ます。
日本全国に分布し、中国、朝鮮半島にも生息しています。
平野部の水田や浅い堀上、流れの緩い用水路、ため池等で水草が茂り、日当たりの良い浅い場所で生活しています。
水田や池で普通に見ることができたのですが、昭和30年代(1955年)からの農薬の大量散布や水田そのものの減少により個体数は激減し都市部では見られなくなりました。
近年、法規制により農薬の使用が控えられ個体数が回復しつつあります。
捕食性の水棲カメムシで、魚類、モノアラガイ、他の昆虫等の動きに反応し、鎌状の前肢で捕らえると口針から消化液を送り込み溶けた体組織を吸汁する体外消化を行います。
同種間の協調性がよく、個体同士が近接していても共食いが発生しにくく、数十頭という高密度で生活していることもあります。
年間の活動開始は3月下旬頃からで、繁殖行動も活動開始と共に行われます。
産卵は4-8月で、メスが30-40個の卵塊をオスの背中に産み付けます。
卵塊を背負って保護するオスは飛翔ができず動きが制約されますが単独で世話をします。
しかし、通常と変わらない程度に摂餌はできます。
オスの背負った卵塊は7月下旬-8月に孵化します。
孵化後はオスが幼虫の世話をすることはありません。
むしろ、自分の子供でも捕食対象としてしまいます。
また、幼虫同士の共食いも行われます。
幼虫は5回の脱皮を行い成虫となります。
成虫は10月頃より陸上や水中で越冬し、2年程の寿命があります。
日本に生息するコオイムシの仲間は、コオイムシ 、オオコオイムシ とタイワンコオイムシ の3種がいます。
アフリカには、70mm以上になるタガメに似た大型種がいますが、メスがオスの背中に卵を産みつけるコオイムシ特有の習性を持っています。
採集データ
採集日・ 2004年6月
採集地・愛知県 一宮市
撮影データ
カメラ・OLYNPUS TG-3
撮影モード・フォーカスBKT(撮影枚数30コマ・標準)、LED発光、露出補正0.0、WBオート、ISOオート、3200×2400(4:3)
画像編集ソフト・CombineZM、PaintShop Pro X8
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